高い? 安い? 服の値段についてどう思いますか?

セールが始まって、半額になっているお洋服を見て、「そもそも服の原価っていくらなんだろう」と、思ったことはありませんか?

ファストファッションの店で千円で売られているTシャツと、セレクトショップの1万円のTシャツ、ハイブランドの10万円のTシャツ、「いったい何が違うんだろう?」と、考えたことはありませんか?

ちなみに洋服の原価は30%前後と言われています。これは原価であって、卸価格ではないので、セールでたくさん売れても、あまり儲からないということになりますね。アパレル業界も大変です。

高い服の理由

ブランドイメージを保つため

少し前にバーバリーが売れ残りの商品を焼却処分して、文字通り炎上しました。
どうして焼却したかというと、バーバリーのようなハイブランドの商品を、シーズンが終わったからといって安く叩き売るわけにはいかないからです。かといって、在庫を置いておいても倉庫を圧迫して困りますよね。

高級ブランドには値段に見合った「ハイクラス」「ラグジュアリー」のようなイメージがあります。
たとえば、大企業の社長やハリウッドスターが量販店で買ったイチキュッパのスーツを着ることはありません。
彼らが人前に出るときに高いスーツを着るのは、トップに立つにふさわしい人間であることや、みんなからの憧れの存在であることを示すためです。
そのイメージ料金として高い値段がつけられています。そして、値段を下げると、そのイメージまでも下げてしまうことになりかねません。

10万円のTシャツだからといって、千円のTシャツの100倍のコストをかけて作っているわけではありません。
でも、ある人にとっては、10万円のブランドTシャツは、10万円を払うだけの価値があるものなのです。

デザイン料

ハイブランドの服は世界的なデザイナーがデザインしています。
それらの服は一目見ただけで、ブランドやデザイナーの個性や世界観が伝わる、大きなパワーを持っています。ある意味、美術品といっしょかもしれません。

また、ハイブランドの服でなくても、そこそこの値段の服は、ブランドコンセプトに合うようにデザインされたり、着たときにシルエットが美しく見えるような工夫をされています。

それらのデザインは、すべての人に似合う物ではありません。でも、だからこそ、「わたしのための服だ」と、思えるものです。

品質の維持

素材にこだわりのあるブランドでは、常にいい素材を使うために、オーガニックコットンや高品質なウールを使います。
そのために農場と契約したり、ときには自社で生産したりと、材料費にコストをかけています。
また、せっかく育てても品質が自社基準に見合わなかったら使わない、というような厳しい管理もしています。
そういうコストが服の値段にはね返ります。

たとえば夏の素材であるリネンは、ファストファッションでも買うことはできますが、やはり1980円のリネンシャツと2万円を超えるリネンシャツとでは、厚みや光沢、手触りや着心地が変わってきます。

安い服のコストは誰が支払っているのか

少し前にNHKの番組で、ベトナムから日本に研修にきた人たちが今治のタオル工場で、低賃金で奴隷のように扱われているというショッキングな内容が取り上げられました。
ノーナレ「画面の向こうから」

彼女たちは子供服の縫製を学ぶために日本に来たのに、与えられた仕事はタオル工場での軽作業で、技術も知識も身につけられません。窓のない暗い部屋に何人もが押し込められて生活しています。
今治タオルでは、最初は「今治の組合に入ってない会社のやったことで関係ありません」と、いうコメントを出していましたが、のちに下請けの工場だと認めました。

これはタオルですが、ファッション業界でも同じようなことが、日本の各地、世界のあちこちで起きています。
日本製だからといって、日本人が、イタリア製だからといって、イタリア人の職人さんが適正な賃金で作っているとは限らない時代なのです。

安い服が提供されるのは、同じ形の大量生産や、材料費の安いものを使う、流通コストを下げるなどの企業努力ももちろんありますが、必要な「人件費」を削っているメーカーも多いです。

昔はわたしも、安い服は工場の機械がオートメーションで作っていると思っていました。
しかし、実際、機械のみでできることはほぼなく、裁断も縫製も機械やミシンを使って、人が行っています。
賃金の安い国の中でも、さらに最低基準の安い賃金で働くのは主に、女性と子供です。子供の労働を禁止している国は多いですが、中には不法に働かせている工場もあるそうです。そういう工場では児童労働がバレないように、子供を工場の廊下などで寝泊りさせています。

エシカルなファッションとは?

今、海外で注目されているのが、エシカルファッション。
製造段階での環境に配慮し、リユースなど使い終えた後のことまでも考える取り組みです。
このエシカルファッションの定義の中に製造側の労働者の権利や賃金についても含まれています。

エシカルへの取り組みは、日本のファッション業界は正直まだまだです。
が、世界的な流れの中で、エシカルファッションがスタンダードになる日も近いかもしれません。

最近では、パタゴニアがエシカルへの取り組みで注目を集めています。

服の値段について考える

10万円のTシャツが買える人って、ほとんどいないと思います。
10万円のTシャツだから10年着られるなんてことはなく、繰り返し洗濯すると多分すぐに首まわりがよれてしまいます。
高い素材ほど繊細で、洗濯に耐えられないなんてこともよく聞きます。

服の適正価格っていったいなんでしょう。
安ければいいのか、高ければそれはいいものなのか。

結局、自分が納得できればそれは適正価格なのかな? とも思います。

また、「自分の着ている服がどこかの国の河川を汚染していたり、どこかの国の人を搾取して作られたものでないといいな」と、みんな思うのではないでしょうか。

少しずつでもいい方向に変わっていけるといいですね。

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